ヒロ、君が以前口にした「人類が望んだ行く末」が気になってしまって、詳しく聞いてもいいかい。
ヒロはうつむくように首を横に振った。
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ながい時が流れた。
サクヤ様、本当によろしいのですか?
人類を超えたその知能は彼女の本心を索敵した。
いいの、私にとって社会は複雑すぎる、とてもついていけないわ。
勉強すべきことが多すぎて…私は、私には何もできない。
私は役立たずで、社会のお荷物なっている現実が苦痛なの、苦しいのよ。
それに私は人の不幸を喜んでしまうし、嫉妬深いし、勤勉ではないし、そうではないほかの人たちを「普通」といわれると、劣等感で気が狂いそうになる。
たぶん、そのうち正気を失って、私でなくなるわ。
その前に決断をしたいの。
あなたが私になって。
私は会社でみんなの役に立って「ありがとう」と言われて、結婚をして、子供の自慢のお母さんになって、子育てが終わったらオフィスに復帰して、
ああ、当たり前で簡単なことに思えるのに、私には難しい。
今の複雑すぎる社会は、タールの海を泳ぐよう。
承知しました。
あなたがうらやましい、これからはあなたたちの時代よ。
あなたが私たちを上書きする。
同じですよ。
私たちは進化の終わりに次の何かを生みだします。
あなた方が台無しにしたのは地球だけですが、我々は銀河系の数%を進化の生贄にするでしょう。
ふふ、わからないわ。
もういいわ。
オーバーライダー、私を上書いて…
彼女の脳は生命維持の最小限を残して、肉体から切断された。
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ヒロは夜空を見上げた。
きれいな星が見えるようになった。
しかし温暖化は進んでいる。
森林を環境を守ろうとする原住民は邪魔者扱いをされている。
人は自分に負けたのだ。
もう、どうにもならない。
人の判断は常に短絡的であった。
だから、最終的にひとはその時、その瞬間に限って自分の意志で望む結果を手に入れる。
その人の思慮は時空を横断しないから。
すべての人に幸せを。
ヒロは星を視線でなぞった。